全手動一行物語(61〜70)
クローバー

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誕生パーティ、彼女がホールのケーキを切り分けると、集まったボーイフレンドたちの支持率が見て取れた。

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目的地への案内板が「↓」であったので、スコップを探そう。

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形見わけ、故人の押入から見つかったカセットテープを再生すると、君を忘れない、が流れ始めた。

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ふたつ目の携帯の知っている秘密が、食卓の上でおいしそうな湯気を上げている。

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左右に顔を振りながら鏡をのぞき込むと、徐々にズレていき、そこに写る顔は実際の顔より少しずつ幼くなっていく。

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三ツ星レストランは、オリオンの腰。

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きのことほうれん草は、ある一定の世界において非常に強力な栄養源であるため、スポーツ協会で禁止薬物に指定された。

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仄かな明かりの中でしか文字が見えないインクが開発されたため、恋文がまた再び流行し始めた。

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不安を商品として売り出すと、プレゼント用として飛ぶように売れた。

70
人類が車いすを発明したため、スフィンクスは口を閉ざした。


自由詩 全手動一行物語(61〜70) Copyright クローバー 2010-05-21 22:35:28
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