悲しみの輪郭
九重ゆすら

悲しみの輪郭を、そっとなぞり
この雨の行方を探してみる
黒々と光る夜空の奥深くから、
ざあざあと雨は降っていた
冷たい三月の匂いをたたえながら

指先が閉じ込めているのは
言葉を紡ぐことの罪です
蕾がほころぶように、溢れ出てしまうのを
私の中に閉じ込めて
子宮の真ん中で飼いつづけている

熱はとても寡黙で
鼓動に合わせて、その命を宿した
薄紅色の瞬きをひるがえして
とても無垢に笑う

幼さが遺したのは、痛みです
微かに疼く傷は、未だ色を失わずに
たとえば、胸のあたりとか
くるぶしのあたりだとか、
柔らかい部分に沢山散らばっている

悲しみの輪郭を、そっとなぞり
この風の行方を探してみる
黒々と揺れる暗がりの奥深くで、
ひゅうひゅうと風は吹いていた
冷たい三月の色をたたえながら


自由詩 悲しみの輪郭 Copyright 九重ゆすら 2010-05-21 19:32:33
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