かわいそうな 浅倉南
鈴木陽一レモン

 

 実在しない恋人に捧ぐ。



公衆便所で 首を吊る姫君
顔色ならば じゅうぶんに、わるい

たとえば 美しい女でなくても 踊れる舞台は あった。

たとえば、「もうちょっと器用だったら」というのは
たとえば、金額設定の問題 だったりもした。
たとえば、二億円を貢ぐのは ギャグとして成立しちゃうが
たとえば、二百万円だったら リアルの可能性が出てくる。

たとえば、結末を知らないわけではない。
悲劇のヒロインが 盲目のバレリーナとは、限らない。
それでも、しあわせな地獄に 舞い堕ちてしまいたい。

 しあわせな女の子に 会いたい

君が決めてくれたことは、きっと正しかったと思うよ
ぺんぱる
 ぱられる
   らいん
すれちがったことも あったけれど

交わらないままの関係で つづいていく
平 行 線 は
永久に重ならずに

それでいて 忘れたりも しなかった。

ありふれた奇跡のひとつも起こらなかったせいで
生まれ変わったあとの
ぼくが、
君を
君だと
見分けられなかったとしても
怒ったりしないよね?

もう一度
奇蹟みたいに
出会いなおそう

生まれ変わっても君のこと 裏切るから
どうぞ 許さないで

どうぞ ゆっくり 忘れておくれ、ね。


  絶望日和の街角で
  地下アイドルが裸体を晒す
  絶望日和の公園で
  声を失った詩人がダンス

  絶望日和の海の底
  へぼピアニストは腕を切り
  絶望日和の夢の中
  恋を失った聖者が自殺


新体操は
とっとと、やめちゃって

あのひとの為
料理を勉強したりとか
せっせと貯金をすればいい

気高くあれ かわいそうな 友人たちよ


自由詩 かわいそうな 浅倉南 Copyright 鈴木陽一レモン 2010-05-21 14:32:29
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