鐘と棘
高梁サトル


空っぽの水瓶がひび割れる音がする
誇りを失ったその時は殺して
無様に誰かの足元に跪くことのないように

空想の純潔を
手折る薔薇を
遠視する愛を
合わせ鏡に映して

時々考える
至高の衝動のこと
私のこころはそこに凝縮されていて
それはまるで端正な花容のようで

脱ぎ捨てた服が
抜け殻のように
散らばっている部屋と
整然と並んだ玄関の靴

ひとつの救いは
「さようなら」も「こんにちは」も
繰り返されるやさしい言葉ということ

毎日早朝と夕暮れに鳴る
あの鐘の音のように
大体が狂いなく

私が棘を抜く時間に


自由詩 鐘と棘 Copyright 高梁サトル 2010-05-19 22:25:24
notebook Home 戻る