カニミソ
番田 

ひとり窓を見つめて立ちつくしていると、雨風が吹りしきっていた。緑色をしている雲なのかもしれないと思えた。青色をしているところは、港の方からの色だったのかもしれない。曲がり角を曲がりながら、道を探してスーパーに入ってみると、生鮮食料品の大安売り中だった。

奥にエサを探しに出かける。真っ赤な色をしたバケツもついでに入手しておいた。なるたけ、でっかい入れ物の方が、たまらない。青色をしたバケツに蟹を入れられたなら、このお日様もピカピカに見えるのだろうけれど。特選コーナーでは、あこがれのポールスミスのポスターを掲げている。あまり、安売りなどはやらないブランドだから、値段は夢の中なのかもしれないと思わされてしまう。

真昼になったので、リールを巻きに港に戻った。穂先はそのままで、魚のかかっている様子などなかった。太った友達は退屈した様子で、ワゴンの奥の方から寝息を響かせていた。ドアは全開なので、風だけは涼しそうだ。
「ばかやろう」
縦筋の刻まれた買い物袋を鼻の穴にねじ込むと、堤防の先っぽに立ち、魚肉の塊の入った缶たちを投入していく。科学という、図書室の雑誌に書いてあったがままのやり方だ。蟹がかかれば、空っぽなこのバケツはにぎやかになることだろう。それ以上に、今晩もカニミソが並べられた食卓を想像するだけで、私の青い色のよだれは赤い色のバケツの中にこぼれ落ちそうだった。


自由詩 カニミソ Copyright 番田  2010-05-18 01:34:46
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