黒猫は ー猫三題めー
……とある蛙


食事を邪魔された黒猫は
あんぐり口を開け、あらぬ方向を眺めた。
何かが見えるようだが、
飼主に頭を撫でられ、首を大きく伸ばした。
彼女は飼主が好きなのだ
視線を合わせたままにゃーとなく。

彼女の食事はその後継続されることは無く
そのまま、箪笥の上に逃げ出した。
彼女の跳躍は飽くまでも軽やかで
無駄な力は一切入っていない。
無駄な高さまで跳躍しないという余裕がある。
そして、箪笥の上から顔だけ出して
飼主を見下ろしながらにゃーとなく。

黒猫の視線の先にいる飼主は
黒猫に媚を売るため、彼女のために削り節を用意し
箪笥の縁(へり)から顔を出す猫の
小さな頭を乱暴に撫でるのだ。

そのとき喜びながら黒猫は
前肢を飼い主の腕に絡めて
手のひらを甘噛みし
そして、後ろ肢で飼い主の腕に
キックを繰り返すのだった。


自由詩 黒猫は ー猫三題めー Copyright ……とある蛙 2010-05-16 11:34:13
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