こころ そらの
AB(なかほど)

  

空を見上げたあなたを覚えている

強いひとになりなさい
と言われたことがある
そのときのあなたは泣いていた
いつしか同じことを僕が言っている
気づくと僕は泣いてはいない
あなたのほうがずっと
ずっと強いひとだったと
いまさらのことのように思う


市場や病院の帰りの
アイスクリームはごちそうでした
お父さんやお兄さんには内緒でした
手をつないでくれました
道端の草で
お守りを作ってくれました
それから
青空を見上げたあなたへ
ひこうき雲の行く先を何度か問いました
ついに本当のことは
教えてくれませんでした


ひとは助け合うもので
約束は守るもので
親祖先は敬うもので
家族は守ってゆくもので
思いは
言葉になったり
ならなかったり
しながらも育つもので
一生は夢のようです
あなたの怖い顔や優しい顔
や悲しそうな顔の
そのまなざしの向こう

僕らの知らない
ひこうき雲の人もまだいるのでしょう




供養のために用いたお盆を
門の外まで片付けに行くときにふりかえると
無縁仏がよってくるからと
身体を固くしながら
お手伝いをしていたことがある
そう言うあなたは
たびたびふりかえって
おぼつかない僕らを見守っていた
ことにも気付かなかった





自由詩 こころ そらの Copyright AB(なかほど) 2010-05-11 12:23:38
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