団地(再投稿)
小川 葉

 
 
ある日曜日
友達の家に遊びに行った
団地と呼ばれていた
うっかりお昼過ぎまで
友達と部屋で遊んだ
お昼ごはんをご馳走になった
コロッケとパン一枚だった

家に帰ると
塩鮭一切れとご飯が一膳
私のために用意されていた
母に事情を話した
似ているようで少し違う
お昼ごはんにも
僕と友達の違いが現れていた

友達は父さんから
買ってもらったギターを
真っ二つに壊してしまった
僕は好きなだけ
玩具を買ってもらっていたけれど
いくら買ってもらっても
また新しい玩具が欲しかったので
母さんが買ってくれた
父さんのかわりに

ひさしぶりに
友達の家を訪れた
あの日壊したはずのギターが
彼の部屋にあった
きっと父さんが
直してくれたのだろう
うっかりお昼過ぎまで
友達と部屋で語り合って
お昼ごはんをいただいた
塩鮭一切れとご飯が一膳だった

家に帰って
団地の友達の家にと言いかけて
はじめて気がついた
もう団地とは呼ばれていなかったのだ
きちんとした
地名で呼ばれるようになっていた
その経緯を教えてくれながら
母はコロッケとパン一枚を
用意するのだった

いくら買ってもらっても
足りることがなかった
玩具はすべて捨ててしまった
かわりに父さんは
僕をスキーや釣りなどに
よく連れて行くようになった
 
 


自由詩 団地(再投稿) Copyright 小川 葉 2010-05-10 11:07:54
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