空を飛ぶペンギン
ベンジャミン

忘れてしまったことのいくつかを
からだのどこかで覚えているように
透明な結晶のようなかたちで
胸のおくにしまっている

ひさしぶりに動物園にいった
動物園にはあまりいきたくないのが本当で
それは何か淋しい感情がこみあげてくるのを
からだのどこかが覚えているからだと思う
けれどその淋しさを感じたいと思うとき
頑丈な柵のむこうにいる動物たちを
身近に感じることができる

とても当たり前のことを
「そうだ当たり前なのだ」と感じることは容易だ
たとえばペンギンのところに天井を覆うような檻が無いのは
誰もがペンギンが空を飛べないことを知っているからで
誰もがそのことを当たり前だと感じているから
だからペンギンは水のなかをゆうゆうと泳ぎ
それを上からながめていることに疑問を持たない

じっとペンギンを見ていると
ときおり目を閉じて風を感じている
忘れてしまった何かを思い出そうとするときの
自分のすがたとかさなってしまう
からだのどこかが覚えている
別に不思議なことじゃない

そして僕も目を閉じて
閉じたまぶたのむこうにいるペンギンが
自由に空を飛んでいることも
そんな自由に憧れるのも

別に不思議なことじゃない
 


自由詩 空を飛ぶペンギン Copyright ベンジャミン 2010-05-09 23:40:22
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