対頂角の性質
ねことら



あとの2分30秒は余分だったから、ipodを一時停止した。すきなものもきらいなものも、足りないくらいがいい。筋肉質に憧れている。



週末午後の烏丸通り。春の空気は煙ったような青。しっちゃかめっちゃかにみんな幸福そうだね?塗料の分厚い微笑みは重くはないの?わたしだけアスファルトを一枚めくって違う星を歩いてるみたい。あー、あー、此処はとてもさびしいところです。スターバックスもモスもありません。



サイダーのキャンディを、きちんと音を立てて噛む。わたしをそういう風に規律する。ぱっと散るものにしか興味がない。睡眠薬のカプセルの緑色。夕暮れの雨上がりの匂い。水平線。工事現場のクレーンの影。団地の古い蛍光灯。羽虫の焦げる鈍い音。夜景のオレンジ。ナイフの刃先にひかる水滴。



計器の振れ幅がひとよりすこしおおきいだけだよ。ベッドの上で、体育座りのままきみに伝えても、不思議そうな顔して、きみはやさしく撫でてくれて、またセックスの手続きに戻っていく。いま、頭のてっぺんからつま先まで100パーセントの純度で、きみに好きとつたえても、この空間には何も残らないでしょう?甘いスポンジでデコレイトしても、プラスチックの核はしん、と此処に鎮まっているんだよ。しらなくて、いいけど、



気がつけば長い下り坂だ。やわらかな毛布を引きずっていく、布地はだんだん灰色を含み、ほつれるでしょう。いい表情だと思う。要はくたびれ方の手順だ、できるだけスマートに汚れてしまえ。







自由詩 対頂角の性質 Copyright ねことら 2010-05-09 21:48:50
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