立場
蒲生万寿

高台には屋敷が立ち並び

たっぷりとした敷地の中に

余裕ある構えの家

庭も広く松、竹、欅と

幾つもの樹木を植え

その敷地を俗世と断ち切るべく

高い壁がとりまく

「私の領域には、私が許した者でしか立ち入らせぬ」

無言の圧力

これが誰もが欲しがる成功

ヒステリックを内に隠した余裕

その足下に広がるむさ苦しい家屋

成功に憧れ続ける庶民が潜む

狭く泣きたくなるような敷地に目一杯、家を建て込み

隣家と危うく触れ合おうとするすんでの所で権利を主張する

「ここ迄は俺の所有する土地だ」

涙ながらの主張、露骨に現わすヒステリー

隣の夕餉の臭いも筒抜けに

陽の射さぬ場所が家屋を囲む

持つ者と持たざる者

歴史は正にそれだけに尽きる

賢者の説き明かした法は理解されぬ

未来永劫、理解されぬ

野に咲く花の方が余程、知恵と工夫に満ちているではないか

日よ輝け

何かの為では無く

そのままに

闇に浮かぶ灯火ともなり給え

近所で貧しき民が

恥じ入ることも無く怒号を上げる

それも別に構わない

月は輝く

満月には未だ成らずとも

星は瞬く

遠い光は届いているぞ

私は持たぬ者の

拙い言葉を書き綴る


自由詩 立場 Copyright 蒲生万寿 2010-05-08 21:32:17
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