月の嗤うさき5〜6
……とある蛙


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成り成りして成り会わないところと
成り成りして成り余っているところを
刺しふさぐ

ため

類人猿は歩きながら
歩きながら
空腹を覚え
傍らの虫を食う
傍らの虫を食らいながら
道を見る
道はゆっくりカーブし森の陰に行き先をブラインドし

森の中央から降る
得たいの知れ無いチャフ
天空から降り注ぐ
幸せと思うほど
類人猿は気楽ではない
その一枚を咥え

また歩きだす。
チャフの散布で
また方向が不明となった
類人猿は空腹を覚え
枝の中途にある鳥の巣に気づき
手慣れた感じで木を登り
卵を掠め取る。
そして、眼下をうろつく
長い筒の道具をもった
自分と似た獣(ヒト)に敵意を感じる

大声を上げて枝から舞う
自分と似た獣は脅えた目を彼に向け
長い筒を構えたが
頭上から獣の頭を斜めに
頭を斜めに叩くと
簡単に頭蓋骨は砕けちり
脳漿は付近に散乱
獣は息絶えた。

理由は不明だが
彼は大声を上げて駆け出した。
何かが切れて
彼の頭蓋骨の中では
天に指びさした時の声が聞こえる

イザナミ イザナミ

行け イザナギ

早く片端を孕ませろ

かたわ?

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類人猿の頭蓋骨に響く声
道行きの一際高い杉の木の
頂上に類人猿はよじ登る。

天空に輝く青い満月
降り注ぐ月の光の粒子を浴び
天空に向けた類人猿の
半分できた憂鬱な彼の陰影は
彼の苦悩を炙り出す。

月は光の粒子と欠片(かけら)を注ぎ
それ自身の不思議な顔を類人猿に見せる。
ある時は蟹
ある時は美女(蛙)
ある時は兎
ある時は不気味な殺人鬼
ある時は狂人
月は青い(淡い)光の粒子と欠片(かけら)を注ぎながら
に〜っと嗤う

また、頭蓋骨の中にあの声

成り成りして成り会わないところと
成り成りして成り余っているところを
刺しふさぐ

ため

イザナギ


自由詩 月の嗤うさき5〜6 Copyright ……とある蛙 2010-05-05 16:21:06
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