りゅうぐうのつかい
春日線香
りゅうぐうのつかいを飲んでしまった
寒天のようだったから つい
つるつると飲みこんでしまった
せっかく遠いところから来てくれたのに
まさか飲んでしまうとは と
母屋の人たちは驚いている
わたしも驚いている
とにかく体に水を足してやらなければいけない気がして
泉に行くと
ちょうど牛や馬を殺しているところで
あんな水 飲めやしない
あわてふためいて畑の裏にまわると
こちらは女学生が列を組んで
行く手を遮っている
ああもう終わりだ
じわりじわりと包囲を狭められて
捕まったら 祭りの席に出されるのだ
さあ みなさま
これがくだんのばか者でございます
どうぞご覧になってください
当一座の目玉でございます
そうして見世物にされて
畳いちまいほどの広さの檻に入れられたまま
海に沈められてしまう
海の底で千年も反省したら
千匹のりゅうぐうのつかいになって
漁師に釣り上げられるのだ
りゅうぐうのつかいを飲んでしまったばかりに
こんな悲しいことになるなんて
ばかだなあ
水が飲みたいなあ