おとうさん、「痛いっ」ってささるわ
美砂

おとうさん、
首をひねるたびに
うわごとみたいに
「痛いっ」、「痛いっ」っていうの
がなんでか、なんでなおらないのか、よくわかりません、
ほんとうにいたいときしかそういうこと、くちにださないひとですし、
おとうさんは病院で薬ももらっているけれど、
それはまたちがう、血糖値かなんか、そういうのを
正常にたもつ薬だそうですけど、それと、これは、
ちがう、
もうずっとまえからいってるし、
はっきりいっておとうさん以外の人間は
この家ではことごとく無力です。
養う、ということができません。ようするにお金をもうけられない。
ということは、おとうさんそのものが、死活?というか、
境目?というか、とにかくそこにばっか力が、圧みたいなんが
くらくらあたってたまらん雰囲気
だから、
帰りがへんにおそかったりするともう
びくびくものです。
わたしは手に力をつけたいです。
気功師のような力をつけたいです。
おとうさんはそういうの、信じるようなひとじゃないんですけど、
おとうさんの痛い、ところへそっと
きづかれないようにかざして
エネルギーがみちて
おおっ、とかいってすっかり
元気そのものになってもらいたい
だいたい
わたしってなんのためにいるんでしょうか
おとうさん
そりゃみんなひごろたいらな感じで過ごしてますけど
代わりがいないということは、なんか綱渡りっぽくないですか
そんなこわいもんではないんだろうか
おとうさん、「痛いっ」って
ささるわ、こっちにまで
「痛いっ」って、
なんにもできへん



自由詩 おとうさん、「痛いっ」ってささるわ Copyright 美砂 2010-04-30 22:22:21
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