夜めぐる夜 Ⅱ
木立 悟







ちぎられる紙
ちぎる紙
はざま はざま
せめぎあう

扉の前の
やわらかな不都合
光の前の
しじま つまさき

背のびをして しずく
背のびをして 白詰草
ひとつひとつ
口に含む

夜に溶ける声
海の生きもの
橋の上をゆく
冬と冬

目から離れ
頬をわたる
離れ 離れ
くちびるに会う

分かれていても
指に打ち寄せる
花の熱 ただ
花の熱

扉を閉める音 開ける音
午後の路に水位を増す
空は在る
空は在る

粉が降り
池には虹の輪
沈む家
樹の上の夜

冬と冬が
呼びあう下をくぐり
風も路も火も
同じ色に鳴る

水に重く
奏で 浮かぶ
目に映る指を 曲線を
たどり迷う二乗の夜

ひとつのなかにふたつが笑むとき
どうしようもなくひとりを喰むとき
背のびをするくちびるに
花が花が降り来るとき

うたうことも
話すことも
からだを透り
雨のあとを追う

原を踏むものもまた原であること
星の自転に結ばれた弦
つまびくもの つまびかれるもの
同じであること

多くの約束ごとを破り
明けの光を浴びられぬまま
鉱の鉱の
鉱のまばたきを巡りつづける




























自由詩 夜めぐる夜 Ⅱ Copyright 木立 悟 2010-04-29 20:32:42
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