一時間の夢
梨玖

右手には拳銃を持ち
誰も居ないデパートで刺客に追われる
私が狙っているのは赤髪の少女
怯えながら逃げるその女を殺すこと

エレベーターを逆に駆け上り
デパート内を逃げながら追いかける
まず2階 婦人服売り場
刺客が来て銃を撃つが
私は夢の中
あたるはずも無く弾は消える

そして3階食器売り場
カトラリー売り場で包丁を取る
右手には拳銃
食器を無造作に切りつけた後
背中のホルダーに包丁をかける
ああなんて狂った姿
気分はまるで暗殺者

4階紳士服売り場
銃のマガジンを替える
途絶えもせずやってくる刺客は
尽く消し去った
少女は怯えながら必死に逃げる
来ている制服のスカートが半分破けている

5階小さな美術館
ついに捕らえた赤い髪の少女
どこから持ってきたのか包丁を出して抵抗する
素手で受け止めるけれど
私は夢の中
血を流すはずも無くそれを折る
涙を流し命を請う少女
銃を構えて彼女を撃つ
赫い景色が視界を覆う

狂気と血痕に塗れる私の肢体
踊り狂うはデパートの屋上
下弦の月は私を見ている
水膜が張った私の裸眼は液体を流すけれど
ああ
私は夢の中
私は夢の中
わたしはゆめのなか


自由詩 一時間の夢 Copyright 梨玖 2010-04-27 13:31:43
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