神日和の十三夜
楽恵

今夜は神日和カンピューリゥ
神日和カンピューリゥは物忌み
神日和カンピューリゥの夜は家の外へ出てはいけない
村の年寄りは若者に諭した

けれど若者は
十三日の月の夜
隣村の娘と逢う約束を交わしていたから
村人が寝静まった頃を見計らって
実家を飛び出した

手拭で顔を隠すと
蛇皮張りの三味線を持って
山道をひたすらに走った
あの娘と並んで唄うため
青い風が阿壇の葉を揺らし
ざあざあ鳴っている

隣村まで道半ばのところに来て
ぐしゃり、と草履が何か踏みつけた
月明かりに目を凝らして見ると
大きなツメノ蟹を一匹
潰したのだった



沖縄県八重山諸島に伝わる古典民謡『山原節』より


自由詩 神日和の十三夜 Copyright 楽恵 2010-04-24 00:04:08
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