神日和の十三夜
楽恵
今夜は神日和
神日和
は物忌み
神日和
の夜は家の外へ出てはいけない
村の年寄りは若者に諭した
けれど若者は
十三日の月の夜
隣村の娘と逢う約束を交わしていたから
村人が寝静まった頃を見計らって
実家を飛び出した
手拭で顔を隠すと
蛇皮張りの三味線を持って
山道をひたすらに走った
あの娘と並んで唄うため
青い風が阿壇の葉を揺らし
ざあざあ鳴っている
隣村まで道半ばのところに来て
ぐしゃり、と草履が何か踏みつけた
月明かりに目を凝らして見ると
大きなツメノ蟹を一匹
潰したのだった
沖縄県八重山諸島に伝わる古典民謡『山原節』より