さよなら
無機質な電話の切断音が耳を突く。
彼の優しい声音を思い出しながら その最後の一言を口の中で反復する。
ふと 喉の奥で焼け焦げるような熱を感じた。
痛い。 こぽり。 溢れたのは 掠れた嗚咽。
窓を叩く雨音。
何時の間に降ったんだろう。
熱を持ったケータイを握りしめたまま 思わず目を向ける。
水滴塗れのガラスに 泣き腫らしたわたしの顔が滲んで浮かんでいた。
真っ赤な顔 真っ赤な目 真っ赤な耳
色っぽくなんてない。痛々しいくらい 醜いだけ。
愛してる。 愛してる。 まだ愛してる。
嫉妬も 情欲も 独占欲も 全て。
貴方の全てが愛しくて 淀んでく心。
清らかな人が愛しいわたしは まるで真逆。
だからさよなら? だから離れた?
わたしは わたしは わたしは。
貴方に釣り合うだけの 綺麗な 綺麗な 綺麗な?
いや わたしは 清らかな女であり続けたかった。
涙と 雨と 溢れる熱に侵される体。
わたしはゆらゆらと 流して また恋を探すでしょう。
愛してる。から。 次は 君を。