二〇〇年後の日本人同士の会話
はらだよしひろ

AとBとCとDとEとFの六人の日本人が居酒屋で一緒に酒を飲んでいる。
AがBに聞いた
 「ねえ、お前って古くからの日本人の血以外で何処の国の血が混ざってる?」
Bが答えた
 「俺の父方の曾祖父さんはブラジルにいたらしくて、で、母方のお祖母さんが韓国人で
母方のお祖父さんのお母さんが中国人らしいよ。」
 CがAとBの会話に入ってきた
 「たったそれだけ?俺の父方のお祖母さんなんか黒人と中国人との間にできたハー
フなのに日本で生まれ育ってるし、母方のお祖父さんはモンゴル人で、母方のお祖母さんのそのまたお祖母さんはアラブ人だぞ。」
三人の会話を横で聞いていたDが呆れ顔で口を開いた
「何言ってんだ。俺んとこなんかなあ、父親がアフリカ人とのハーフで、父方のお祖父さんがイギリス人とのハーフで、母方のお祖母さんがフィリピン人とのハーフで、母方のお祖父さんのお母さんがパキスタン人で、母方のお祖父さんのお父さんがトルコ人なんだぞ。」
Eがため息をついた
「はあ、良いなあ、みんな。俺は曾祖母さんがロシア人ってぐらいなものだからなあ……。」
FがEを慰めた
「大丈夫。俺はアメリカ人とカナダ人とブラジル人とハワイ人とウクライナ人とアルゼンチン人とチリ人の血が入っているけど、みんな日系人だから。」
Aも語った
「俺は先祖の誰が何人なんてわからないよ。箸は鉄箸を使うし、ターバンも巻くし、家に畳の部屋もあるけどそこにキリストの像が置いてあって毎日のように礼拝するし、先祖伝来の食べ物としてチーズとキムチを自家製で作っているし、かと言って神社に言って初詣もするし、わけ分からないよ。」
Dがまた呆れた。
「当たり前だよ。だってそれが日本人なんだから。」


自由詩 二〇〇年後の日本人同士の会話 Copyright はらだよしひろ 2004-10-05 21:42:46
notebook Home 戻る