(未完の)春(に散る)
たりぽん(大理 奔)

散っていく桜の花びらが
冬の雨に運ばれて
道端の排水孔に吸い込まれ
川面にひとすじ
春の航路を開く

桜の花びらはそらを見上げて流れるのだろうか
それとも、みなそこを見つめてすすむのだろうか

川縁で波紋の終わりを確かめようとすると
灰色の雲が黒いみなもにひらりとする
花びらではないものが
そして、瞳を開いてながれていく
空ろに私をみつめながら

流れていく
それは雲の錯覚だろう
冬の名残がそうさせたのだ
橋をくぐって
宮島行きの舟が
桜の航路をすすんでいく

散っていくのだな
いつかは散って
この川に流れていくのだな
毎年訪れる春と
二度と訪れない
今日と背中合わせの



自由詩 (未完の)春(に散る) Copyright たりぽん(大理 奔) 2010-04-21 22:26:54
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