秋の日 
まんぼう

水晶石に似た秋の日
マツムシソウの咲く藪に潜み
椎の実の落ちる音を聞いていると
誘う声がした

老いたハンミョウは処女のように
悲しげに首をかしげる
ダフネは立ち止まり
誘いつづける
いちめんのすすき野を駆ける
硬くこわばったアキレス
さびしく恋い慕い

 あの赤いのはワレモッコウ
 あなたに似たリンドウ
・・似たツルギキョウ

あの女が囁く
耳元で
水の
流れる音がする

まだ叱っているのか
わたしを

夢を見ていたのか
目覚めると思いだせない
人であったような
獣であったような

抱きしめていたのに

嗚呼そこか
黄葉したクヌギの陰
忘れられた歌の調べがながれ
ナナカマド実が赤く色づく処


自由詩 秋の日  Copyright まんぼう 2003-10-07 09:25:45
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