斜めから射す光
within

脆く崩れた時間の跡は
黒いばかりの真空の穴で
菜の花の黄色と向日葵の黄色が
溶け始めた根雪を帰路にいざな

冬の残滓は降り積もり
焼却炉へ
埋立地へ
悪魔の似姿をした双子とともに
渦巻く海へと散ってゆく

春に降る雪は沈みゆく日を掬い上げ
河瀬から見える魚たちもまたどこかへ放たれる

加速することに飽いた少年は
立ち止まり、太陽に正対するが

空気が薄い
空気が薄い

と、森に逃げ込み
帰ってこない


明日の太陽は今日のまなこの残像で
眼前に広がる夕日は
昨日憑りつかれた夢魔である

薄暗がりの中に現れた女の乳房を
探り当てる夢を見て
ベランダから朝日に飛び込もうと
爪先を浮かす
夏の
暁の斜光は酸素を生み続ける


自由詩 斜めから射す光 Copyright within 2010-04-13 21:59:44
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