ほんとうのこと
佐藤伊織


ほんとうのことは大事だからだれも話してくれない

そしてそれは教えられるものでもないから
「大人」はそれを子供達に教えようともしない

「世界」をいくら泳いでみても
ほんとうのことはわからない

そんなことを考えてみた
それは神秘主義なのかもしれない



ほんとうのことは純粋でまっすぐだから
とっても危ない

ほんとうのことを知ったつもりになって
世間から外れてしまうこともある

ほんとうのことがほんとうのことかは
本人にしかわからない


裏の裏の裏側
隅っこに空いた穴の隙間から覗く世界

ほんとうのことを知りたくて
うずうずしている
子供のような老人



子供はほんとうのことを知ったとき
子供でなくなってしまう

もしここがネバーランドだとしたら
そこは14で心の成長が止まるんだ



ほんとうのことを知らずに
僕らは機械仕掛けのおとぎの世界


ほんとうのことは純粋でまっすぐだから
それはすぐ隣にあることなのに

それがそうであることに気付くのに
人は一生を使い果たしてしまう



でもほんとうのことを知って
瞳の最後の輝きが消えるのなら
それもまた
良い人生だったといえるかもしれない



ああこれが
ほんとうのことなんだ


みんなが思うほんとうは
一体どんなことだろう


僕が思うほんとうとは
一体何がちがうのだろう


自由詩 ほんとうのこと Copyright 佐藤伊織 2010-04-13 21:59:27
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