電源
斎藤旧

ごめんね、とつぶやいて、終話釦をひとつ落っことしてみただけだと言うのに私は寄り添っていた心ぞうを引っぺがされるような気持ちになってたまらない。

爪をかけて思い切り剥がす。
心ぞうをさんざく声が痛い
心ぞうが鼓膜を突き破る、
心ぞうが鼓膜を突き破ろうとしている
ぞうのあんなに大きな耳が私を貫こうとしている
あんなに長い鼻が私から生まれようとしている

さみしい六畳間に耳が出ようとしているのを、口を閉じて必死に耐える。

滑稽だと思っても
ぞうはあばれてしまうのだ
あたまでそうとわかっていても
ぞうは鼻を絡めて遊びたい

ぞうが疲れてねむるとき、
LEDは点滅する。
開けて飛び込むおやすみが、
いつもよりもやさしく見えた。



自由詩 電源 Copyright 斎藤旧 2010-04-09 23:45:56
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