うりずん
楽恵

弥勒の雨の降り初め
緑青の音階が透きとおった
川はもう
市街地に集合して海に戻りたがっている。
手のひらに(砂の塩)
29℃の残り香が開け放たれた窓を過ぎ、
鉄の雨が降った
クリーム色をした大きなほら穴が残された。
雨宿りして、かくれんぼ
ま黒い瞳に見つめられた
戦闘機の残響
木霊する南風のゆきどまり。

冬、赤土の畑に蒔かれた種
麦の熟れ初め
誰も拾わない忘れさられたカルシウム
柔らかな昼の髪だけ、掻き分け伸びる
錆びた鉄片だけ探して歩く。
島影が
ラムネ色に潤いはじめる頃のこと。
丸くて赤の傘を差してみたら
パヤオ!
新しい秘密基地を君と見に行こう。



自由詩 うりずん Copyright 楽恵 2010-04-08 16:01:28
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