一輪
こしごえ

 社会や自然環境がどうあれ、私の内部は、いま大河が深く静かに流れるようにして、その上空では雷(いかずち)が一輪の微笑を打ち鳴らしている。

 今朝の朝日が部屋に差し込んで来た。また、一日を始める時だ。
何やら見えない空虚な悪意の闇に浮かび上がるように、私の影は濃さを増しつつ、その闇を食らい尽くそうと輪舞する。決して抜け出す事の出来ない縁(ふち)の内側。「この」宇宙の果て。

この宇宙が、ある宇宙物理学者のいう通り、ニュートリノの飽和により無に帰する時。私を構成していた原子も無に帰るのか。
詩の遺伝子が、この宇宙をつらぬく時。

冷たく微笑するくちびるが風のきらめきに散る、散る。ひとひらの花びらが宙へ接吻する。

まるい月が青くかたむいてゆく









自由詩 一輪 Copyright こしごえ 2010-04-03 06:53:09
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