白い犬がほえる夜
アクアステル

白い犬がほえる夜
空は今日はまっさらで
風も吹いてはいない
こおろぎが鳴いていたけれど
今は深海のように静か
もう眠ったのだろう
わたしは学校の屋上にひとり・・・
ネオンの光が創り出す
冷たい電子の虹に怯えて
群集になると増幅する
言葉のエネルギーに追われて
過去の記憶に逃げ込んだのか
わたしは学校の屋上にひとり・・・
まっくらの空が丸くえぐれて
そこから光が沈んでくる
過去から届いた光は世界の孤独を
やさしく青く包み込む
太陽に焼かれた心を
そっと冷やしてくれる
わたしは月を見ている
眼を離れた眼差しは
エーテルの風に乗って
宇宙をまっすぐ進んでいく
ああこの時がずっと続くのなら
わたしは人形から解放される


自由詩 白い犬がほえる夜 Copyright アクアステル 2004-10-03 01:43:35
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