白い犬がほえる夜
アクアステル
白い犬がほえる夜
空は今日はまっさらで
風も吹いてはいない
こおろぎが鳴いていたけれど
今は深海のように静か
もう眠ったのだろう
わたしは学校の屋上にひとり・・・
ネオンの光が創り出す
冷たい電子の虹に怯えて
群集になると増幅する
言葉のエネルギーに追われて
過去の記憶に逃げ込んだのか
わたしは学校の屋上にひとり・・・
まっくらの空が丸くえぐれて
そこから光が沈んでくる
過去から届いた光は世界の孤独を
やさしく青く包み込む
太陽に焼かれた心を
そっと冷やしてくれる
わたしは月を見ている
眼を離れた眼差しは
エーテルの風に乗って
宇宙をまっすぐ進んでいく
ああこの時がずっと続くのなら
わたしは人形から解放される