春の唄
岡崎師


雷を閉じ込めた蕾。静か静かに、開く、
浅黄色の空を閉じ込めて、朝露にとける、
ふるえた葉から零れる雫が、地面にふれて
貴女は朝を僕らに告げる。


夕景に聳える、あの塔の廻りを飛んでいるあれは何だ?
黒い影が血を流し、游泳している、
風を集めて、星の下、青い影を海に落として
片眼を無くした一羽の彼が、薄暮に染まり、夜を縫う。


幾重にも張り渡された青を掻い潜って
射し込む光の元で微かに揺れる葉の音涼しく
緑豊かに、凪ぎを待つ
遠く楓の下枝揺れ、震えた土が、舞う君を逐う。


桜化粧の朧月。淡く滲んだ夜が光る、
風凪ぎ、海は藍に輝き、夜に溶け出し私は消えた。
灰色雲が夜を流れて、鈍い影を地下に落として、
彼女は海に身をかくす。


自由詩 春の唄 Copyright 岡崎師 2010-03-29 17:20:41
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