日常のその後で
かんな

台所に立つ祖母に声をかけた
今日の夕食の相談に
太陽が少し傾いて窓からこちらをのぞいている
ぼそぼそと話すと
野菜室からは季節外れのナスが三袋
びっくりして首を傾けると太陽と目が合った

ナスの揚げ浸しが食べたい
これは家族みんなが喜ぶだろうな
紫色した肌に
ピーラーでしましまの線を引く
なんだか小学校の工作みたいな
そんな一瞬の錯覚

マーボーナスを作ろうか
これは祖母が喜ぶだろうな
スライスしたナスとピーマンとニンジン
長ネギも加えて調味料を準備
なんだかあっという間の
野菜たちの共演

ナスと豚肉の炒め物
ネットで検索したレシピに挑戦
ナスを切って豚肉に片栗粉をまぶす
フライパンでジューっと音を立てたら
合わせだれもジューっと入れて
香り立つナス料理三品目の完成

そんな様子を太陽がぐっと傾いてのぞいていた
月がよだれを垂らしそうだよ
そんなことを呟いて
ほらほら家族が集まってくる
畑仕事を終わらせて
ナスが待っている食卓につく

にこにこ笑顔の祖父がいて
おやおやとびっくり祖母がいて
へとへとに疲れた父がいて
ほらほらと支度する母がいて
どうどうと聴くわたしがいるから
ナスを囲んで話がはずむ

そんな様子を太陽は見ていないけど知っている
後でこっそり三日月に
教えてもらったのかもしれないね



自由詩 日常のその後で Copyright かんな 2010-03-21 18:18:13
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