命が欲しい
はらだよしひろ

流す涙が注がれる海の
波はどこかで戯れながら
それが愛なのか恋なのか
やりとりして
見えるテレパシーと
見えない抱擁で喘ぐ君の
声の高らかさが
散る

どこから来ようと
今の営みが
これからの営みと
どう繋がるのか
知る者も知らない者も
母と父のセックスの端で
擦れる

殺戮と征服欲と国益と正義感は
すべてが充たされる満足と
不満の間に存在するだけ

原油が一バレル50ドルを越えようとも
僕は銃の影に怯えてはいないし
僕が兵隊に殺されることも
武装集団に拉致されることも
考えたことは無い

ただ
戦争であろうが
平和であろうが
戦争でなくても治安が悪く
いつ命を落としても可笑しくない
世の中であろうが
セックスは繰り返され
レイプだろうが愛の営みだろうが
なんとなく交わろうが
子供は生まれ
中絶は行なわれ
捨て子もいれば
愛情の無い豊かな国で育つ子供もいて

幼児虐待で痣と傷を体に刻まれながら殺された子供と
栄養失調でガリガリになった体で死んだ子供と
虐殺で何発もの銃弾を体に浴びて死体となった子供と
どれが一番幸せだったろうか

胎児のまま命を落とした子供は
幸せと言う言葉を知っていただろうか

満たされない想いと
満たされない想いと
満たされない思いは

どれだけの幸せをどれだけの人に教え

満たされない想いと
満たされない想いと
満たされない思いが渦巻いて

どれだけの幸せを奪っただろう

今日もまた世界で一番豊かな国が
命を落とした子供を省みることはなかった

僕が生きている世界で2番目に豊かな国は
それでも一番目に豊かな国が正しいと言った

どうもそれが正義らしい

世界が正義で満たされたら
どれだけの幸せがどんな形で訪れるのだろう

僕は正義なんか要らない
命が欲しい
ただ生きたい
誰の命を奪うことなく
生き長らえる命が欲しい


自由詩 命が欲しい Copyright はらだよしひろ 2004-10-01 22:25:20
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