非実在青少年なんたら
真島正人

某東京都の条例に関して、簡単な覚書を。
細密な批評ではないです。



まず思うのは、石原に「エロいのは不謹慎」なんて言われたくないわな、ってこと。
じゃぁご自身の小説はどうなんだろう、と思ってしまう。
確か、レイプする場面とか障子をペ○スで突き破る場面とかなかったっけ。
いつも男らしい演技してるんだから、まずご自身の著作を全部出版禁止にするぐらいの男気を見せてくださいよ、と思う。
「他人に死ねというなら、まず自分の腹を掻っ捌いて見せろ」と思うわけです。



僕はエロゲー畑で仕事してきた人間なので、とりあえずエロゲーを題材に話させてもらうけど(どうせそのうち規制されそうだし)、エロゲーって不謹慎なのか、というと、エロゲーの世界に関わってきた僕から言わせてもらうと、『大して不謹慎じゃない』。
エロゲーってのにもいろんな種類があって、「うわ、これは下品だなぁ」と思わせられるような作品もたまにありますけど、そんなのは本当に稀。
エロゲー市場の大多数を占めている作品は、いわゆる『ストーリーもの』で、そのほとんどが純愛を機軸においている。
一時期「泣きゲー」ってジャンルが流行ったんだけど、その名の通り、悲恋を描いて、プレイヤーを泣かせるわけです。(笑)
陳腐で、子供のままごとみたいな内容です。
全然不謹慎じゃない。
というかむしろ、エロを機軸に成り立っているはずの市場で、恋愛するゲームが大きなウェイトを占めるっていう事実には、むしろ驚きを感じる。
「なんだ、ユーザーって、真面目だな。エロだけじゃダメなのか(笑)」と思うわけです。
端的にいって、美少女ゲーム市場ってのは、「ヌキゲー」とそうじゃないのとに分けられる。
ヌキゲーってのは、文字通り、ヌくためのゲーム。
で、ヌキゲーとそうじゃないゲームって、どちらのほうが主流なのか、といえば、むしろ、ヌキゲーじゃないほうが主流であるといっても、過言じゃないわけです。
単純にエロいだけのゲームってのは、あまり売れない(もちろんそういうニーズもあるけど)。
こういう、本来なら欲望まみれになるはずの美少女ゲームという市場が、ほうっておくと自然に、エロさよりもゲームとしてのクオリティーの方向にシフトしていったというのは、なかなかに面白い現象だと思う。
僕は、もともとあまり美少女ゲームには興味がなくて、とにかくシナリオライターになりたかったから、とりあえず飛び込みやすかったアダルトゲーム製作の世界に飛び込んだんです。
正直、アダルトゲームなんて、汚いものだろうと思っていた。
でも、業界に入ってみて驚いた。
みんな真面目なんですよ。
基本的に。
ほとんど眠らないで必死に製作して、邪なことなんて、考える暇もやる暇もない。
警官とか教師で、性犯罪をやって捕まる人って結構いるけど、アダルトゲームの製作をやってる人が、そういうことをやって捕まったなんて、聞いたことがない。
もしも、アダルトゲームが、人間に悪い影響を与えるというなら、アダルトゲーム制作会社は、悪の巣窟になっているはずでしょう。
みんな、作ったゲームをテストプレイするわけですから。
そりゃユーザーよりも大量にプレイしてますよ。
でも、犯罪者なんて聞いたことがない。
そもそも、アダルトゲーム会社の社員なんて、3分の1ぐらいが女性ってことがザラにある。
もしもアダルトゲームをやってると、性犯罪をしたくなるのなら、女性社員は日夜男性社員にレイプされていることでしょう。(笑)
もちろん、そんな事件、聞いたことない。

内容も、相当に真面目です。
あまりにもお人よしな内容のシナリオばかり書かされる。
「おいおい、こんなに善人ばかりの社会はないだろう」と思わず突っ込みを入れたくなるようなプロットなわけです。
もちろん、そうじゃないのもある。
でも、そういうのは、たまに、善人だらけの世界に退屈して悪人が出てくるようなもので、あんまり主流じゃない。
いわゆる陵辱ゲームってのがあるけど、中学校の男子生徒が頭の中で妄想しそうなストーリーで、それほどリアルなものではない。
なによりも、アダルトゲームで一番ウケがいいのは、いわゆる学園モノで、なぜウケるかというと、これをプレイするのはもちろん学校を卒業した成人なわけですが、そういう人がプレイして、青春時代に思いを馳せる。
そういう仕組みなわけ。
だから、女の子と恋愛する場面よりも、結構、普通の日常生活の何気ない行為ってのが、たくさん挿入されるわけです。
「あぁ、そうそう、学校帰りに買い食いしたよなぁ」とか。
郷愁と共感、という要素が大きい。
で、もちろんついでに女の子と恋愛できりゃなおうれしい。(笑)
セッ○スできりゃもっとうれしい。
そういう一種の、願望機なわけですね。
これも、非常に幼い、幼稚な願望です。
不謹慎というより、大人が、ちょっと生活に疲れて、ママに甘えたくなるような感情のほうが渦巻いているように思える。



で、まぁ、ゲームの話は結構どうでもいいとして、MIXIで、東京都の条例についてのいろんな人の日記を見ていたら、多くて驚かされるのが、国政と都政の違いがわかっていない日記が多い、ということなんですね。
こういうのを見ると、「おいおい、日本大丈夫か」と頭が痛くなる。
新聞ちゃんと読んでる?
議会ってどういう風に成り立ってるか、理解してから発言してる?
都議会ってのは、都議の集まりで、そこにはいろんな党の人がいる。
その人たちの中には、今回の条例に賛成の人も反対もいるでしょう。
自民党の中にも賛成の人も反対の人もいるだろうし、民主党の中にも賛成の人だって反対の人だっているでしょう。
今回の件は、党単位の決定ではありません。
地方自治体と政府とは、また少し違った集団です。
むしろ、例えば市政レベルなどでは、党という集合体よりも、仲良し議員同士の派閥のほうが力が強い場合だってある。

しかし、新聞をよく読まずに、国の法令と勘違いしている人や、政府与党が立案したのと勘違いしている人がかなりいる。
こういうのって、ちょっと問題だと思う。
僕は正直、別に多少エロ本が規制されたって困りゃしないけど(あんまり規制されすぎたら困るけど)、こういう風に、適当に発言する人が多いっていう風潮のほうが、心配だ。

また、そういうのに乗っかって「これだから与党はけしからん」みたいな煽りをする人が、MIXIの日記を見ていると結構いる。
それってたぶん「どうせこの条例に騒いでるオタクどもは、これが都議会の条例か、政府与党が発したもんかわかっちゃいねーだろ」と思って、与党の批判をしたい人が書いているのだろう。
僕は別に与党の肩を持ちたいわけじゃないけど、党単位の決定とは関係ない条例を使って、適当な煽りをするってのは、相当に情けない行為だと思う。




『最近の若者はなっとらん』という思想と、今回の非実在なんたらは結びついてそうだけど、じゃ、規制すればするほど、青少年はすくすく育つのかどうか。
最近の若者は、温室栽培で甘やかされたから、大人になっても子供なのだ、というのなら、奔放な性を規制した時点で、それこそ温室栽培を加速させてるんじゃないのか?と思う。
いずれにせよ、若者の批判をする前に、まず、自分たちの思考能力の低下ぶりを自己批判してみたらいかがなものだろう、と、思わせられないではいられないのだ。


散文(批評随筆小説等) 非実在青少年なんたら Copyright 真島正人 2010-03-17 05:48:26
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