嘆き月
麻生ゆり

夜空に浮かぶ
ホワイトホールのような満月が
泣いている
嘆いている
それは
母である地球が
徐々に欠けてゆくから
それをただ見つめるだけの自分が
悔しいのだ
月は傷つき、あらぬ叫びをあげる地球を見て
人類に憤っている
だから人間たちを改正させるために
魔力〈ルナティック〉を得た
人を狂わせる力だ
おかしくなってしまった人間は
自滅行為をするようになる…
それでも月の力が及ぶのは夜だけ
さんさんと輝く太陽がいるから
卵白のような色をした月の
出番はない
やがて陽が暮れて
いよいよ月が主役になると
たとえ鋭い刃のような
弱々しい姿だとしても
私たちを狂わせようとする
それでも
人間が衰退することはない…
もしもそうなるときは…

愚かなるや我ら人類…
地球の悲鳴にも
月の忠告にも気づかない
本当は己が作り上げた
滅びの道をただ踏み続けるだけ

先に倒れるのはどちらになるや…


自由詩 嘆き月 Copyright 麻生ゆり 2010-03-16 23:13:46
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