降りしきる、雨に触れてみた
窓枠

息を吸って吐く、ということが
ぼくにできる最大限の生き方だと思っていた

  *

雨だれを視線がおっかけている
その、
背中には哀愁の目が向けられてるから
不自由を強いられる体をごまかせば
まごまごとした家族に笑ってみせた

 ほんの些細な原因でも
 ほんの少しずつ積み重なると
 誰も笑えなくなってしまうんだ

病に体をむしばまれて
ぼくの体の見えないところ
精密に検査しないと分からないような
小さな小さな黒丸がテロを起こしていた

確かな悪意をあらわに
裏店の庭先から忍び込まれたそのとき
ぼくはうたたねをしてたのかもしれない

誰も彼もが絵空事を思いつけば
脚色された台本の言葉になんて
真に慰められることはないのだよ

雨音を受け入れていること
少なくともぼくはうなだれたりしない

  *

あさぼらけに嗚咽が混じれば
ノック、ノックして
家族に息遣いを教えてあげた

息を吸って
息を吐くということが
ぼくにできる最高の生き方
と、知っている今だからこそ

晴れることのない空はないのだと

ノック、ノックして

 みんなに伝えてやりたい


自由詩 降りしきる、雨に触れてみた Copyright 窓枠 2010-03-08 21:56:44
notebook Home