降りしきる、雨に触れてみた
窓枠
息を吸って吐く、ということが
ぼくにできる最大限の生き方だと思っていた
*
雨だれを視線がおっかけている
その、
背中には哀愁の目が向けられてるから
不自由を強いられる体をごまかせば
まごまごとした家族に笑ってみせた
ほんの些細な原因でも
ほんの少しずつ積み重なると
誰も笑えなくなってしまうんだ
病に体をむしばまれて
ぼくの体の見えないところ
精密に検査しないと分からないような
小さな小さな黒丸がテロを起こしていた
確かな悪意をあらわに
裏店の庭先から忍び込まれたそのとき
ぼくはうたたねをしてたのかもしれない
誰も彼もが絵空事を思いつけば
脚色された台本の言葉になんて
真に慰められることはないのだよ
雨音を受け入れていること
少なくともぼくはうなだれたりしない
*
あさぼらけに嗚咽が混じれば
ノック、ノックして
家族に息遣いを教えてあげた
息を吸って
息を吐くということが
ぼくにできる最高の生き方
と、知っている今だからこそ
晴れることのない空はないのだと
ノック、ノックして
みんなに伝えてやりたい