ノート(指の季)
木立 悟



何のために拓かれたのか
忘れ去られ 荒れ果てた地に
静かに触れるふたつの指



空き地から空き地へ
ざわめきを越え
かがやく差異の曇がひろがる



空にも地にも
遠く 近く
小石の宇宙を呼びつづける指



海に降る雨
午後の陽の雨
鼓動のなかを走り去る雨



はねかえり はねかえり
道と同じ大きさと長さに
水たまりの光はつづいてゆく



灯りの滴
空き地の滴
飛沫の音から生まれる霧



町を映す流れの上に
何度も紋を描く指
光を荒れ地に傾けてゆく



夕暮れから夕暮れまで
水と人の軌跡を結び
つややかに舞うふたつの指






自由詩 ノート(指の季) Copyright 木立 悟 2004-09-30 15:18:37
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