蛇たちの休息
吉岡ペペロ

あたしたち、地球で死ねるから、しあわせだよ、

ヨシミがユキオの部屋に遊びに来ていた
2時間半かけてヨシミを迎えに行き2時間半かけてヨシミを連れて戻りユキオはヨシミの胸にたくさんの歯型をつけた
こうやって休みの日には会えるし、ひとりごとみたいにメールもできて、声も聞けるでしょ、あたしたち、地球で死ねるから、しあわせだよ、
欠けた月が照っていた
ユキオが布団をひんむくとヨシミのからだが夜に浮かんだ

ふたりでパチンコを打ちにゆくのが休日の過ごし方だった
ここでもまず打ちにいこうということになった

また、見てる、
ヨシミのちいさな手だった
おなじものに触れていると余計にそう感じた
ユキオはヨシミのちいさな手が好きだった
なにか考えごとしてるの、
ユキオはカタヤマから送られてきているであろう資料を読みたかった
となりのヨシミに出玉をあげながらあと少し打ってお昼だから出ようかと声をかけた

お昼はうどんにした
わっ、おでん、えっ、やっすう、
小にしとけよ、肉ぶっかけの冷やがうまいぞ、おでんはすじと豆腐だぞ、

その白い蛇、うまいだろ、
ユキオの最近のクセは目の前のものに蛇を見つけてしまうことだった
カタヤマの影響にちがいなかった
カタヤマはユキオにとっての蛇つかいだった
ひとは誰もがじぶんにとっての蛇つかいを必要としているのではないか

その白い蛇、うまいだろ、よく言うことを聞く蛇だから、おまえのお腹にもちゃんとおさまってゆくだろうよ、
楽しそうにうどんを食べるヨシミにそんなことは言えなかった






自由詩 蛇たちの休息 Copyright 吉岡ペペロ 2010-03-07 17:33:09
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