ぷるぷる
なき

窓の内側で腰掛けている
表面張力が健気に見える雨の夕方
君に意味もなく電話をかけようかどうか迷う時と似ている
零れそうに張り詰めたコップと水の縁を
楊枝の先でつつく
君の声を聞いても
格別に安心を得られるわけじゃないと理解した時と似ている
健気な表面張力が水の存在を守るように
ぷるぷる揺れる
君の声を吸い込んで
染み込むように控えめな戸惑いを覚えた時と似ている
ため息に撫でられた健気さが存在を主張するように
ぷるぷる揺れる


窓の外側で傘をさしている
やわらかな霧雨と並んで風に流されながら
手のひらを前に差し出す
水分で満たされた空気に満たされた肺
広げた傘から雫が落ちて
表面張力はどこまでも健気にぷるぷる震える
健気さが意固持に見える理由がわからないまま
差し出した手のひらを口実にして
霧雨を全身で吸い込む


表面張力が健気に見える雨の夕方
健気さが意固持に見える理由がわからないまま
君に電話をかけようかどうか迷いながら
差し出した手のひらの表面から
ぷるぷる震えていく




自由詩 ぷるぷる Copyright なき 2010-03-06 21:24:06
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