片野さん
れつら

片野さんはシステムで
片野さんはその前には詩を書いていた
片野さんがシステムを書き出したので
片野さん、システムですね と言うと
片野さんは、詩ですね、と答えたのだった

片野さんの最終ログインは4年前に終わっていて
東京の飲み会に、どうしてだかぼくを誘ってくれてそれきりなのだった
駅地下で、よくわからないひとたちが話していて
そのコンテンツが明るいのだか暗いのだかすらわからんのが
飲み屋を出てからもしばらくは続いていたのがおぼわっている
確かぼくは、ひとりで電車に乗った

地下鉄が揺れる間もぼくは詩のことなど考えず
けれどもその間も揺れる吊り革を眺めていた
どうしてだか電車が止まっても
誰も握らない吊り革はぶらんぶらんと余韻を残していて
苦々しくおもい、隣の吊り革をひん掴むと電車がまた発車した
ぼくは揺られた

中央線はある地点を境に地上に吹き出すのが特徴的で
けれども酩酊した頭ではそれがいつなのかよくわからなかった
ぼくはわりにしっかりした足取りで電車を乗り換えていた
さらには新幹線の切符を改札に通し
路線図を嫌うようにしょぼくれた無人駅で降りた
そのまま4年ほど暮らした

ある日、片野さんがやってきたので
片野さん、詩ですね と言ったら
片野さんはシステムだった
そんなことはあるまい
片野さんはそう言って笑ったが
ぼくにはそう見えた
そんなことはあるまい
ぼくは残りのビールをぐいと呷り
切符を買う



自由詩 片野さん Copyright れつら 2010-03-06 06:36:01
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