蛇つかいたちの行進
吉岡ペペロ

春の水っぽい匂いがユキオにはなんだか他人事のようだった
グシャグシャにつぶされた空き缶が朝の風に音を立てた
ユキオはそれを視界に入れないようにして会社へと急いだ

いつもより会社の朝はそわそわとざわついていた
きょうの朝礼で紹介される経営コンサルタントの男がもう応接室に来ていた

ユキオの会社もご多分にもれず売上を30%落としていた
2月からの給与カットが姿をかえてユキオの胸と顔には貼りついていた
自分の価値が減ったという恥のようなものが貼りついていた
8時10分からの朝礼でその経営コンサルタントがどんなことを言うのか、ユキオは期待もし不安も感じていた

チャイムが鳴りラジオ体操、経営理念の唱和のあと経営コンサルタントが社長より紹介された
おはようございます、片山五郎と申します、私は皆さんと心を合わせて、ベクトルを合わせて、我社の売上を半年で回復させます、皆さんどうかご協力ください、
カタヤマがうちの会社のことを我社と言ったことがユキオには何だか痛快だった
カタヤマはそれ以上なにも言わず一礼をし社長から始まった拍手を受けていた
朝礼のあとカタヤマは社長について3階にあがっていった
幹部社員もそのあとに続いて階段のほうへ向かっていった
それがユキオにはなにかの行進のように見えた





自由詩 蛇つかいたちの行進 Copyright 吉岡ペペロ 2010-03-03 00:52:08
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