先魚進紀
木立 悟




魚の群れが夜を飛び
鱗と涙を落としては
何も無い地を焼いていた
火の端々が鳥になり
さらに暗い夜へと去った


雲と砂の波のなかで
魚は涙を閉じていった
白と銀のへだたりの
わずかな わずかな痛みのなかで
魚は力を閉じていった


数え切れない小さな鳥が
荒れた海に重なり 島をつくる
下になった鳥のほうから
少しずつ魚になってゆく
魚は静かな海底に堕ち
幾つもの音のまばたきを飛ぶ
やわらかな羽の耳になり
夜の涙を聴きつづけている




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自由詩 先魚進紀 Copyright 木立 悟 2003-10-06 07:43:40
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