渋谷へゆこう
天野茂典
恋を失って12年
それでもだれか
こころのなかで
慕っているものがいたか
どうだかわすれてしまった
『わがノルマンデイ』* もない
それでも人は生きてゆかれる
砂を噛むような人生
白紙のままのノート
書き込めなかった歳月
機械化してしまった
感情の潤滑油
人が恋しい
年をとるほどに
男のぼくは
女が好きになってくる
同じ人間なのに
性のちがいで
からだがちがう
そのからだが好きになってくる
ますますエロくなってゆくのだ
女性の器官に興味がわいてゆく
どうしょうもないおいぼれだ
女がおもしろい
おもしろい女がそばにいない
じつに惨めな話なのだよ
また恋がしたい
渋谷へゆこう
援交だ
ナンパするのだ
これを書いたら
全財産もって
VISAカードもあるぞ
さっそく横浜線にのって
渋谷へゆこう
かわいい子がいるといい
さあ楽しみだ
ぞくぞくしてきた
外は雨
教え子の赤い傘
さしてゆこう
うひひ
*安藤元雄詩集
2004・9・29