どうせならきえない傷がいい
あぐり



見上げたらいつでも多角形の空がある
やらかくなっている陽に俯き
切り揃えた前髪の、ちょうどその先端に
昨日の憂鬱を集めている

いつでも後悔は白い波のようで
自分を傷付けるのが好きな癖にわたしは
都合の悪いことを濁らせて霞ませていく
部屋から三分の実習室へ歩いていく途中、
瞳に昨日の憂鬱が
ほんの少し滲んだ気がする

なにかをわりきったり
なにかをあきらめたり
なにかにゆるされたり
ねぇ、そういう全部が傷になったらいいと思うよ
最善なんてわたしは知らない
それを求めることを
滑稽に思ってしまう自分に
あなたが傷をつけるなら
それにもしあわせを感じられると思うの

見上げても空からまなざしが降ることはなくて
あたたかな陽は思考を鈍らすというのだけど
それでも春にも憂うでしょう
夜ごと身体に増える痣は
やっぱり、しあわせな愛なんだと
信じているよ
だからもっと抱き締めていて。
わたしの身体に、怯えなくていいから
もう、なんにも傷つかない
あなたのつけた傷を感じて
今日も愛してる



自由詩 どうせならきえない傷がいい Copyright あぐり 2010-02-26 19:01:50
notebook Home