最先端
オンガシ



鬱々 頭に雨が降る
メンテナンスの時期なのだろう
僕のまるまってきた背中に
灰色の霧がかかる

目玉をかっぽり取り出して
空中にふわりと浮かべ
僕の姿が見下ろせたなら
故障箇所を検証しよう

腕と脚は長いものに取り替えた
内臓もバージョンアップ
顔は流行のオリエンタルで
皮膚は艶のある小麦色

おかしいな…
どこにも異常は見当たらない
なのに原形だった時のように
鬱々 頭に雨が降る

完璧な理想を
いち早く手に入れたけれど
近頃の街中には
僕のようなヒトをよく見かける

最先端のパーツを手に入れれば
僕という心の認識が変わり
どこまでも機能を新しくすれば
誰よりも偉大になれるのか

全てが僕の思うがまま
神をも恐れない存在になるはずなのに
弱くて醜い原形の時と変わらず
鬱々 頭に雨が降る

ねえ、そこの僕のような君

とても洗練されていて素敵だね
でも後ろに霧が見えるんだ
誉め殺しで払ってあげるから
僕の霧も払ってはくれないか

鬱々 頭に雨が降る


自由詩 最先端 Copyright オンガシ 2010-02-25 22:40:21
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