手紙
小川 葉

 
 
朝、目覚めると
四十歳になっていた

王選手が
七五六本目のホームランを打った
ポスターが貼られた
四畳半の部屋で眠っていたのに

昨日は小学校から帰って
庭でスキー遊びをして
夕ごはんはすき焼きだったのに

生きてる人が
生きている食卓で
幸せと不幸せについて語りながら
生きていたものを食べていた
幸せがあったのに

母さん
西暦二千年になったら
ぼくは三十歳になるんだ

苦笑していた母は
今よりも幸せで
不幸せだったかもしれない

母から手紙が届いた
朝、目覚めると
四十歳になっていた
私宛に
 
 


自由詩 手紙 Copyright 小川 葉 2010-02-25 03:28:58
notebook Home 戻る  過去 未来