帳尻を、合わせる
あ。

昨夜の雨を吸った落ち葉はぶよぶよと柔らかくなり
いくら踏みしめても何の音も鳴らさなかった
足跡さえも吸収してしまいそうな弾力は
寒さを忘れそうなほどの優しさで失望を覚える


冬はいつだって少し素っ気ない
鮮やかさは秋が終わればはらはらと散りゆき
くすんだ色だけが黙々と積みあがる
空から落ちてきたばかりの雪が真っ白だったり
お正月に飾られる門松が綺麗な緑色だったり
節分に現れる鬼の顔は赤や青だったりするのは
そのクリアさが引き立つためかもしれないし
色の帳尻を合わせるためかもしれない


冷えた風は容赦なく頬を痛めるのに
割れた落ち葉は刃のように尖っているのに
首に巻いたマフラーはふわりとあたたかくて
繋いだ手は驚くほどに心地よくて
つじつまが合わないような気もするけど
これもきっとひとつの帳尻合わせなのだろう


大体のことはうまく出来ていて
暑い日もあれば寒い日もあったり
笑うときもあれば泣くときもあったり
幸や不幸だって永遠のものじゃない


全部、どこかで合わせている


足元は踏みつけるほどに瑞々しく柔らかい
靴に押されて軋んだ葉っぱを数えていると
頭をかすめてはらりと降り立つのは
どうしてだか雨を逃れたらしい一枚の枯れ葉


足を置いてぐっと力を込めると
軋むことも忘れたようにあっさりと粉々になり
水を含んだ落ち葉に混じって見えなくなった


自由詩 帳尻を、合わせる Copyright あ。 2010-02-22 22:26:48
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