春の夕闇
吉岡ペペロ
今夜は約束があるからと家をでて
春の夕闇の風をきる
自転車をたいせつに停め
茶のジャンパーのポッケに両手を入れ
小料理屋にはいらんとする六十がらみの男
そんな男においらはなりたい
女将がおいらを待っている、なんて
罪のない本気をかたむけながら
ゆるい苦みをタバコや酒で見つめている
そんな人生もあったかと
二十年まえのおいらが呟いた
煤けた背中が人込みにきえてゆく
自由詩
春の夕闇
Copyright
吉岡ペペロ
2010-02-22 18:54:33