葱(二本)
なき

ゴミ捨て場に長葱が二本捨ててあった
外灯に照らされて
白くきらきら輝いていた
私は、あっ、と思い
見つめながら通りすぎた
玄関の前でもう一度振り返った
葱は白く輝いていた


家に帰って風呂に入った
白い石鹸を見て
葱の白さを思い出す


まだゴミ捨て場にあるのだろうか


石鹸を白く泡立てて体をを洗う


どうして捨てられていたのだろうか


熱いシャワーを浴びて湯舟に浸かる


外灯にきらきら輝いていた葱


湯舟の中で手足を折り曲げ体育座りをする


まだずっと新鮮そうだったのに


膝をぎゅっと抱える


毒でも入っているのだろうか

犯罪?そんなまさか!ニュースの見すぎね

誰かの落とし物だろうか

袋に入った長葱を落とす?そんなまさか!言葉にするのも手間がかかるわ


のぼせてきたので湯舟の縁に腰掛ける


考えるのを止めようとして少し後ろ髪引かれる
私が考えるのを止めたなら
葱はきっと
淋しいに違いない
と思う


風呂を出て
濡れた体を拭い
寝間着を着て
濡れた髪にタオルを被せ
外に出る


数歩進んで
目を凝らすと
葱は外灯に照らされて
白く小さく輝いていた


私はその場にうずくまり
葱の輝きを確かめた
息の温かい夜だった


自由詩 葱(二本) Copyright なき 2010-02-20 01:56:02
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