『世界の終わりに詩人は笑う』
東雲 李葉
もしもこの世が終わるなら
何を残して消えてゆこう
大好きな歌や詩を
唄いながら死ぬのも悪くない
だって僕にはそれくらいしかできないから
強大な力に立ち向かうこととか
互いに愛を確かめ合うこととか
誰かとじゃなきゃできないことは何もできないから
いつもどおり独りぼっちでいろんなうたを唄おう
誰も聴いていなくても僕のためだけにうたを唄おう
幸せなこと今までたくさんあったね
悲しいことはそれ以上にあった気がするけど
最期には帳尻合わせて「善かったね」と笑いたい
大切なあの人は他の誰かと笑っているけど
その人たちの分までわずかな奇跡を祈ります
今日だって世界が終わらずに歩み続ける
保障なんてものはどこにも書いていない
どこかの国から大きな爆弾が降ってくるかも知れない
でもそんな時も僕は変わらず唄い続ける
消えゆく命のその横で新しいうたを唄い続ける
そしてこの世が終わった時に
何かを残して消えた人々
大好きな歌や詩を唄いながら
最期まで声を張り上げた人
いつもどおり独りぼっちでいろんなうたを唄っていた
誰も聴いていなくても自分のためだけに唄っていた
幸せな詩人の話を次世代の人々は
笑い話にするのか物語にするのか
今は未だ見当もつかないけれど
ひとつだけ言えることがあるよ
世界の終わりに詩人は笑った
起こるはずのない奇跡を祈りながら
誰かの分までいくつもの願いを乗せて
詩人は言葉を紡ぎ続けた
彼はきっと幸せだった