二年間でズタボロになってしまった
真島正人

僕は冷蔵庫みたいに冷え切っていた
僕は寒かった
僕は毛皮がほしかった
腰まであればよかったな
僕は口に煙草をくわえた
その次にしたいことは
いつも定まらなかった

丘の上から
弟が呼んでいる
いつもの夢だ
ぼんやりとしている弟の姿
あ、なんだもうすぐだな
ほら弟の頭が火を噴いて爆発した
こんなものだ夢なんて

僕は冷蔵庫のようなものだったが
僕はその扉を開けることが出来なかった
扉の中には心臓が入っていた
だからあけることは出来ない
出来ないことについてなぜ出来ないのかを
説明することはいつも出来た
だがそれだけじゃ足りなかった
川岸を
ボロ船が過ぎ去っていった

丘の上には夕焼け空がくすんでいる
風船が色を失って飛んでいる
時々気球が見えるな
僕が口笛を吹くと
風が少しだけ返事をする

少しのことをたくさんといったり
怖くないことを怖いといったり
脅かしたり
外堀を埋めたりすることで
眩暈がしてくる
それを理解することが一番の「いい方法なんだ」
と父親が言ったが
僕はそれをわかっていても
頷くだけの気力がない
いつも手に入れるべきものを手に入れられず
手にいれなくていいものが僕のほうに飛んでくる
フライパンが欲しいな
うんと大きいやつ
ひっくり返して少し焦がして
投げ返してやりたい

丘の上から
怖いものが追いかけてくる
ここは僕だけの領地
僕だけの国
でも引っ張った線は
ぼんやりとにじんでいる
それでいいんだけど
それでいいんだけど

こんなことにももう疲れたな
僕は蒸気機関車じゃない
ぼぉうぼぉうと
吼えるほどの口もないし
だからくわえた煙草をいつも落としてしまう
煙みたいに自然になりたいかもしれない
いいやなりたくないかもしれない
なったとたんに嫌気がさすことだけは
よくよく
わかっている

こんなところまで
降りてきているものがある
それのことを上手く
名前をつけることができない
何かの動物の毛のように
柔らかくて愛らしいし
それは致命傷であるような気もする
本能と感覚だけを頼りにして歩いていると
躓いてしまったり、転ばされたり
あるいは急に上手くいったりする
僕はいろんな人と声を交わすけれど
そのたびごとに細胞は入れ替わっている
僕はいろいろなことが不思議でならない
とりあえず見たいものがたくさんある
それは誰もが同じでだから
見に行ってみよう
見に行ってみよう
見に行ってみよう
見に行ってみよう
もういいよ
見に行ってみよう
もういいよ
見に行ってみよう
もう


自由詩 二年間でズタボロになってしまった Copyright 真島正人 2010-02-18 00:43:26
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