漂流者
やや
風さえ眠った真夜中
月と花だけが起きている
ぴとん ぴとんと
君の白いベッドは滴った闇で濡れている
けれども君は決して染まることはない
しゃらん しゃらんと
暗がりで微かに鳴った茶色い髪
この世界を拒絶する寝顔は限りなく無垢だ
いつもの不敵な笑みは事実なのかもしれない
眠れずベッドから抜け出る
冬でもないのに身体が冷えて仕方がない
息を吐く度に胸の中に溜まった澱が揺れる
自分の手と足が闇に滲んでいる
根本的な相違
そこでようやく私は諭される
いつかきっととても悲しいことが起きる。
ずっと拒絶していた子を迎え入れよう。
こんなにも変化に怖れていただなんて、
ずっと知らない振り
していたん
だね。
騙すように、諭すように、願うように
ずっと唱えていた呪文は
今やっとただの文字になった
すがるように窓を見る
月が首を傾げて消えていった
毎日はいつだって
月の疑問がなくなる前に
太陽が大きく頷いて過ぎ
そして途方に暮れてしまう
懐かしむ事は好きじゃない
思い出す、呼び起こされる、浮かび上がる
今は決して無いものたちへの唄
浮かばれる事なくてもいい
いつまでも一緒でいたい
けれどもいつかは
影さえこの身体から離れてしまう
根本的な創痍
やはり私は諭される
君が寝返りを打つ
闇が君を避けて動く
夜の湖に浮かぶ君という島で
私は一人の漂流者だった